「遺産放棄」っていう言葉聞いたことありますか？
「自分は特には関係ない」と思われるでしょうか？
でも実はイザというときのために知っておいたほうが
良いことなのです。
遺産放棄とは？メリットとデメリットについて
「遺産放棄」とは何でしょうか？
「遺産」を「放棄」することだ、というのは分かりますね。
よく似た言葉に「相続放棄」という言葉もあります。
とてもややこしいので整理しましょう。
親など（被相続人）が亡くなってもし遺言があれば、
遺言書に従って遺産の受取人が遺産相続することになります。
もし遺言がなければ、相続人で「遺産分割協議」を行います。
法律的には法定相続人全員が相続順位によって、
法定相続分を持っているとみなされます。
これを法定分割と言います。
実際には遺産分割協議で全員の合意が取れた場合には、
協議分割といって、
相続財産を自由に分けることができます。
遺産分割協議で全員の合意が取れなかった場合は、
家庭裁判所で遺産分割をすることになります。
「遺産分割協議」のときに
「私は遺産を受け取らず放棄します」と宣言することが
「遺産放棄」になります。
「遺産放棄」によって他の相続人に遺産を譲ることになります。
「遺産放棄」は相続権そのものを放棄したわけではありません。
つまり「この遺産はいらないが別の遺産は欲しい」
と言うことも可能です。
遺産放棄はこのようにフレキシブルですので、
それがメリットと言えると思います。
ただし非相続人に借金があった場合、その借金だけいらない、
ということはできません。
この部分がデメリットと言えますね。
遺産放棄の手続きには何が必要？
遺産放棄の手続きは実は特に何もありません。
え？と思われるかもしれませんが、
遺産分割協議で、自分の主張をしていくだけです。
つまり相続人全員に対して、財産はいらないとの
宣言をするだけでよいのです。
口約束でも構いませんが、話し合いの結果「遺産分割協議書」
を作成することになりますので
そこに遺産放棄の旨を含めることができます。
「遺産分割協議書」作成自体にはお金はかかりませんが、
専門家（行政書士、司法書士、弁護士）に依頼する場合は
費用がかかります。
遺産放棄と相続放棄の違いは？
相続放棄という言葉もあります。
こちらは一切の財産を相続せずに放棄することを意味します。
つまりプラスの財産（預貯金や不動産など）も、
マイナスの財産（借金、賠償請求など）も
すべて放棄することになります。
相続放棄のメリットは、まずマイナスの財産を引き継がなくて良い、
ということです。
親に借金がある場合、それを返済する必要がないのです。
マイナスの財産というと、借金、クレジットカードの代金、
住宅ローン、家賃の滞納、交通事故などの損害賠償金、
被保険者の保証人としての立場があります。
自分の親には借金はない、と思っていても
実はあったりすることも実社会では多いようですので
注意が必要ですね。
相続放棄をすると相続に関する揉め事に関わる必要もありません。
スッキリ、キッパリ赤の他人のようになれるというわけです。
デメリットは何でしょうか？
プラスの財産も継承できなくなります。
プラスの財産には現金・預貯金、不動産、株式、自動車、貴金属、
過払い金、他の人の課したお金などがあります。
亡くなった親に借金が100万円あって、相続放棄したものの、
実は貯金が200万円あった、なんてこともあります。
もうこの200万円を相続することはできないわけです。
こういった場合、一回相続放棄の手続きをしてしまうと、
取り消しはできませんので慎重に進めることが大切です。
また相続放棄をするには自分が相続人であることを知ってから
3ヶ月以内にしなければならないと民法で定められています。
3ヶ月を過ぎると相続を認めたものとみなされ、
マイナスの遺産を含め相続しなければならなくなります。
このように「遺産放棄」「相続放棄」は、縁遠い話のように
思えるかもしれませんが、実はかなり身近な問題であることが
分かります。
親は確実に子どもよりも早く逝ってしまいます。
そういう事態になる前に知識として身につけておくと
イザというときに慌てず対処できます。
